彼方の泡沫
相変わらずデカい(笑)。罪人の魂が宇宙の虚無に放置される、というのが、自分的には大きなロマンや新規性を感じなかった。シーンなのか心理なのかサプライズなのか哲学的な気づきなのか面白いアイデアなのか、話のポイントが何なのか、ちょっとわからなかった。
★あのバーで、私達はヒトをサカナにする
視覚的に楽しい。コアとなるロジックがちょっと無理がある気がして1分ほど立ち止まり考えてしまった(難病で身体を乗り換えることを強いられた人と、能動的に身体改造をする人は、違う人種に思え、「その特性を強みに仲介」がちょっとわからなかった)。。。と思ったら、それ自体もある意味で叙述トリックだとわかり、後半が怒涛の展開で、とても面白かったし、ちゃんと落ちている。2000字だけどしっかりした時の流れを感じた。タイトルも良いしオチもある。SF的な発想力と展開がすごい。心には何かが残りました。
千の手は切り取られても
視覚的に面白く、文体の臨場感もあり引き込まれた。文章の身体感覚があると思う。面白く、展開自体がミステリーなので加速的にワクワク読めたが、ラストが唐突に感じた。首をかきむしってるK28が、おもむろに菩薩的な事を言うのが、自分的には違和感で、急にK28という存在のリアルさが萎んだように感じた。K28を未知の存在と見る場合、例えばキリストも十字架に打ち付けられたり、仏も差別されたりもするけど、彼らは他人に傷つけられつつ、弱さを見せずに微笑む存在。他人に傷つけられつつ、自分の首をかきむしりつつ、でも微笑むというのは、昨今のダークな漫画的にはアリな美であるけれど、それはまず、その存在が共感されるよう十分に描かれていることが前提な気がします。
★軌道マンション
超おもしろかった!!!最初のつかみも抜群で、時節時節にくすっと笑わされつつ妙に深みと納得感のあるうんちくがあり、最後もキレイなオチ。視覚的にも面白いし、よく伝わる。初恋のミキちゃんを思い出したくなる状況に妙な共感が(笑)。ただただ上手いし、ショートショートとしての完成度が高いと感じた。
AIのキャラ立ち3原則
これは考えさせられた。面白い。AIが本格的に喋りだすというのは、ありそうでなかった発想に思える。2000字だし、異常論文とかレポートの形とかもありなのかなと思った。キャラ立ち、という言葉が、僕の語彙力の問題なのかもだが、どういう意味で使われてるのかわからなかった。同様に、ポジショントークという言葉は、僕はわかるけど、これがさっと頭に入る人は一般的には多くないかもしれない。
終末期の世界線
アイツらは何時でもそうなので、納得感はあります(笑)。最後の「タイムマシンを作ろうか逡巡している」がちょっとわからなかった。ストゼロ飲んだ後のラストに何が起きているのか、分かるのに10秒くらいかかった(僕が部分分枝や、局所交叉効果というものを知らないからかもです)。パラドックスは「認識と記憶が書き換わっていく自覚」と一応はケアされているのだけど、僕的には置いてけぼりにされたように感じた。防熱コートは妙に想像できてしまう分アラが目立ってしまい厳しいガジェットかもしれない。
おやすみなさい、よい夢を
面白い!臨場感がある。展開が笑えつつ、妙に納得。夜ちゃんもちゃんと活躍している。ちょっと不思議、ちょっと怖いで、程よくおちて、ショートショート感があり、うまくまとまっていて納得感のある作品。
ふえる
なんだか優しい話。たくさんのオリヅルラン達が、「私を連れて行って!」とゆらゆらしてる中で、小さくてつやつやのペット感がある奴がつれていかれるのは何かわかる。オリヅルランで埋め尽くされた部屋は、果たして、キレイと呼ぶべきなのか、ある種の捨てられない症候群で主人公の心理の反映なのか。。。
人為的多重人格の地平
興味深くなり得るアイデアだと感じるのですが、その前提となる設定を呑み込むのが難しく、魚の骨が喉にささりながら読み進める読書感でした。別の人格を作るのに精神科に行く、というのが、リアリティライン的に厳しいと僕は感じてしまいました。現実にとても近いところで設定を作るのって難しいんだろうなぁと思いました。またビリーミリガンを読んだことがある人なら、本作での人格分化や統合が都合よすぎると感じてしまうかもと思いました。
遥けき鳥のこだま
幻想的な情景の創り方であったり、展開と会話の過不足のなさであったり、2000字ながらも時と場所の流れをしっかり描く力が、さすが威嚇しまくってる三浦君の文学的底力だと感じながら読みました(笑)。前回、朝まで飲んだので、何を言っても目つぶしをされるぐらいで済む関係だと僕は勝手に思ってるのですが、、、恐らく、高い文学性やリアリティを実現しながらも、結末で、読者を更に予想もしないところへ引っ張り出すことを意図されているのだと思います。アメリカよりは欧州的な劇作というか。そう考えた時に、ムルクルが早回しした歌が10秒で終わったのは「やられた!」と思ったのですが、結末のインパクトが、思ったより弱いなと感じました。最後はキレイにまとめられていますが、個人的に、それ以前の文章がしっかり書かれている貯金があるからか、ラストはもっとぶっちぎってほしかったと感じています。
黒い布
アイデアが面白いと思いました。音を消す、というアイデアは、いろいろなことが過剰になっている現代社会に対する的確なアンチテーゼだと思いました。最近、24時間イヤホンをつけている若者も出てきたとのことですが、こんな感じで、外出時や職場では黒い布を被ってる人が出てきても、妙に納得感ある気がします。
嘘つき少女ちよちゃんのその死と光明
面白かったです。テンポよく、え!と突っ込みたくなるネタが放りこまれ続け、心地よい加速感で最後まで読みました。チヨちゃんを語ることで、語り手の自分のことも何となく伝わってきて、リアル感がありました。ご自身もアピールで書かれてる通り、畳み方がちょっと弱い印象でした。
VRゲーム「スーパーファイナルクエストタクティクスドラゴン」
面白かったです!キレがあり、ゲラゲラ笑いながら読みました。下ネタも下ネタとも言えないギリギリのラインで収まってる。そして不思議と考えさせられるものもあり、よい読後感です。ポリコレとかショート動画の風刺的な要素もあると思うのですが、それを説教するのでなく、物語を通して読者が自分でヤバいと感じて考えるというのが実現されている気がします。これ、翻訳してもグローバルに楽しまれる内容だと思う。タイトルも、「全部の要望を聞くとこうなります」が表されていて秀逸だと思う。個人的には、今回課題のトップ5でした。
海からの贈り物
文章が読みやすい。海ににょろにょろ生えているのがちゃんと想像できた。社会的に大きな話に風呂敷を広げているので、新素材が発見されたとして、そんなに一人の研究者が時代の中心になるかな?とか、リアリティラインがちょっと厳しい気がする。異星人からの通信はクライマックスな気がするが、端的すぎる印象だった。
ちょっとした勇気
読んでいて楽しかったです!文体に反してかなり異常なことが起きていてクスっと笑ってしまいました。2錠分というのも妙に納得で、現実感があり、話全体のリアリティがうまく収まっている気がします。最後にちゃんとオバチャンが出てくるのもよかったです。オバチャンがカタカナ表記の意図が気になりました(叔母なのか、そこらへんにいるおばちゃんなのか、わからない)。
血は水よりも濃い
これは過剰だ(笑)!面白かったです。「そう、おばあちゃん自身が死んだ後も」、のつかみがよくて引き込まれました。後半からたたみ方までが、僕的にはちょっと?でした。自分の血液移植で他の人にご飯を送るというまではすごくリアルだったのですが、そこに他の人が乗っかってきて金銭支援というのが、呑み込めませんでした。前半のリアリティラインが現実に近かった分、後半のバカさを呑み込めなかったのかもしれません。それと、おばあちゃんの思いや人権が無視されているので、何か数行でもケアが必要な気がします。
少女は蝶と戯れる
文体と世界観が心地よくて楽しく読ませてもらいました。アピールで仰られている通り、僕にとっては、置いてきぼりという感じではなかったのだけれど、読み終わっても謎の部分が残り、消化不良という感じでした(けっきょく悪者とは。廃墟の町とは。チョウ達はもう消えませんの意味とは)。ショートショートならハチャメチャEDもありなので、無理にたたまず、幻想的に終わる方向もある気がしました(地球が終わるとか)。
這いまわり曳きずりこむ無数の白い手
コーヒーをぶふーっ!っとしそうになりました(笑)。文章にすごい臨場感があって、でも妙なことを考えてる主人公が不思議で、楽しかったです。僕的には、前半がすごくよかったので、後半の展開になったときに、「え!続きを読ませてよ!」となり、後半が欲求不満になりました。けれど作品の意図としては、全体がキレイにまとめられている訳で、、、こういう広告のモヤモヤ感を読者に実体験させること自体が作品の意図なら、成功していると思います。
サマリーオブ
超おもしろい!何という文才の無駄遣い(笑)。オチとか展開とか気にせずに、手紙の部分が面白くて、ありがとうございます!、です。SNSとか、これに近いような、やたら物事を大きく書きたがる人がいますよね。手紙の部分のひねりは思いつかないのですが、主人公がAIに、同じぐらい過剰な表現でNoと言うための手紙を書かせるために四苦八苦して、手紙が出来上がったりしたら面白いと思いました(文字数的に厳しいけど)。個人的に今課題のトップ5です!
安全は自明なものか?
オチがあるのは納得するのですが、自分的には物語の売りがちょっとわかりませんでした。バカに振り切るか、滑稽なぐらい過剰に振り切るのも可能なのかな?と思いました。安全に関する問答は、けっこう合理的な範囲内に収まっているので、ここが狂気を感じるぐらい安全とかだともっと興味深かったかもです。
悲鳴の蓋
切れ味が鋭いです。余計なことは書かずに、1200字だけれども広い世界観と深みが実現されている。これはマジで凄いことです。文体と世界観と内容が見事にマッチしてると感じました。社会に対する問題意識も考えさせられるものであり、ただただ、うまいなーという感想です。根本的に?と思う部分はあるのですが、梶谷さんは、恐らく同期の全員に注目を浴びてるぐらいの恐ろしいライバルなので、言えません(笑)。
ボーイ・ミーツ・ガールズ
うまい!おもしろい!けど、感想がしずらい汗。文章がうまくて、設定がしっかりしてて矛盾も生じてなくて、物語を引っ張り続けるユーモアもあり、中盤まで楽しく読ませて頂いたのですが…急に、すごいシリアス、そしてリアルなグロテスクになり、え?え?と正直感じてしまいました。結末がこれなら、すべてを真剣なトーンで統一しなかった意図をぜひお聞きしてみたいです。
魔声のアリア
おもしろい!ビジュアル的に、コントロールを超えた声量がホールに響き渡るのが、リアルに伝わってきて面白かったです。乱反響という言葉はちょっとわからなかったです。終始、オペラ歌手の動きや心理を書き続けているので、最後が急に天の声みたいになったのは違和感がありました。
★ズットモ
これは面白くて完成度高い!いろいろと想像させられ(妻が男を見初めた理由はたぶんこれだろうなー、とか)、物語に意外性があり、自分の人生の新しい面が開けるかと思いきや、、、バシっ!と、自分の人生の結果である愛する娘の善意で断ち切られる。でも主人公にはちゃんと変化が生じている。読後感がよく、ズットモというタイトルもよく、(お題の過剰さはないかもだけれど)、含みもあり伏線も回収され、とても楽しかったです!
クレーターの底の小石
ごめんなさい、ちょっと僕にはわかりませんでした。えーと、タケナの歌が止まるということは、恒星から放たれる光は、自然現象ではなく、何かの意思に基づく現象だと理解して。。。ミレイがコンタクトしたので、恒星は、「こいつを利用して掃除してもらおう」と考え、歌をやめてミレイに回収させた。その後に、人間たちに観測されるのも嫌になったので、寒くして、人間たちをどかした、という話なのでしょうか。
感情の名前
個人的には一番好き。ギミックに新規性があり完成度も高い。文体に味がある。会話が心地よい。何より、テーマが良いし、それがちゃんと伝わってくる。主人公の名前を出すために、一人称と三人称が混ざってしまったのが残念(忌引き手続きに自分の名前を書けばよい)。美しいけど、2000字の制約か、描きたいシーンに一直線に向かっている感じで、驚きやひねりはないかもしれない。ギミックや物語のポテンシャルが高いからこそ、ショートショートではなく、しっかり書かれたのを読んでみたい。マジで。
メガネが本体です
ごめんなさい、ちょっとわかりにくかったです。とても細かいところまで目が届いていることが序盤の文章からも伝わるので、恐らく想像を凝らしてじっくり咀嚼しながら読めば、全部が整合性のとれた現象として進行しているのだと想像します。ただ、一般的な知識レベルの読者(僕)が、2000字のショートショートの期待で読み始めた立場では、一行一行を読み進めるのに時間がかかりました。ただ僕の知識量の問題なので、起きていることがすんなり頭に浮かぶ方が読まれると、全く違う読書体験なのかとも思います。
あなたに婚姻の自由はありません
男が超希少になって管理されたハーレム(笑)みたいな状況の漫画の広告が流れてきたりもするのですが、文字だけでもこういう臨場感を味わえたのは、新しい体験でした!ここからどんな物語が始まるのか。。。!
億まではまだ
つかみがすごくよい!その後の展開も、えええ!となり、どんどん引き込まれました。そして、「いつか君が見た、僕の頭の傷、驚いたでしょう」まで来た時、えーと、頭の傷を見たって、いつの話を指すのかな、と躓いてしまいました。その後の展開も。。。すみません、僕が頭が固い人間だからと思うのですが、僕にとっては置いてけぼりにされた感覚でした。
新宿キョンシー
つかみがいい。今までのリクさんとは違うクールな文体。発想が面白いし、作り出すシーンに独創性があると感じる。そうなると、えーと、前回リクさんとは朝まで飲んだので、いろいろ躊躇なく言える間柄ぐらいだと僕の方は勝手に思っているので(笑)、細かいところばかりに目が行く恩田が思ったことを忖度なく書きます。詩的な表現が、何を指しているのかわからない箇所は幾つかありました。”深夜営業を始めた都庁の食堂は若い男女で賑わっていた。『お金がなくても夜景が見える』”は、東京都庁を知らない人にはイメージが沸かないかも。楊 莉莉にはルビが欲しい。実作だけれど、3人称と1人称が混ざっています。はい!むかついたら、次に僕を見かけたときに頭をわしゃわしゃしてください(笑)!(人の話題を出すのはあれだけど、去年の最終課題?で三峰さんが梗概で出した、時空の波に乗る、みたいな奴は、個人的にカッコイーと感じたアイデアで、そして、リクさんのライトで勢いがある感性からそういうものが書かれると、軽くて面白くてカッコいい何かが生まれるんじゃないかと、勝手に期待してます)。
連結融合型巨大生物 八岐大蛇
面白かったです!クラーケン二匹が合体するとヤマタノオロチというのが、妙な納得感(物理)があって、またそれが物語の捻りやオチに繋がってるのが、クリエイティブだと感じました。ただ。。。かなり個人的な感想になるのですが、前回の課題ですごく楽しませてもらったのですが、今回もけっこう被る部分があること、また、ルビ芸は、たぶん別ジャンルで新しいのを創造すればOKなのかもだけど、同じ古事記ネタのルビ芸の連続は、ちょっと新鮮味がないかも。。。と感じてしまいました。別の場所のとんでもない話を期待してます!(てか、いつの間にか頭にリボンが生えましたか(笑)?)
思い出たちの家
自分がもう少し歳を重ねた時代に、ARが一般化してきて、そして、自分の記憶にあるものが、ARとしてポンポン具現化してきたら、どんな気持ちになるんだろう。。。と考えさせられるものがありました。私ごときがあれですがちょっと気になったことを。文節の初めにスペースが入るか、入らないかが統一されていない印象で少し気になりました。「」の中には、「。」とならないかも。誤字はありました。
アン・ミコのニッポン奇麺(きめん)紀行
めちゃ笑いました(笑)(お世辞じゃなくて)。読書感として、桃鉄をしていたら、駅に止まる度に、つっこみどころ満載の駅紹介が入る感じでした。アピール文も仰られてる通り、コント集と感じましたが、質の高いコント集でした!個人的に、いんせきラーメンはツボでした(笑)。あと、ダチョウ・ラーメンは、現実にもやり出しそうな奴がいそうなアイデアでヒヤヒヤしてます(笑)。
夜の一族
読むとわかりました!文章が丁寧に一挙一挙や感情を追っていて、臨場感があると感じました。僕は、物語は、2万字なら2万字以内で始まって結末と読了感を提供する物語、2000字なら2000字で然り、と思う人間なので、本作では読了感がふわっとしてモヤモヤだったかもです!あと、一般社会の就職活動とも共通するかもですが、講師の方々は僕らと同じ24時間で50倍の文章を読みつつ仕事しつつ家庭を築いているので、僕だったら、よほどの自信がない限り文字数オーバーはしないかも!(偉そうなこと言ってゴメンナサイ(`・ω・´))
酒の肴は眠る猫
くるっぷーにょわー、が、今までに聞いたことのない(どこかであるのか?)もので、でも何か妙に納得感あるもので、個人的にツボでした(笑)。くるっぷーにょわー、とは、宇宙的な猫のみが発する音なのか、それとも、私たちの頭が固いだけで、うまく聞き取れていないだけなのか。。。(笑)。
コズミックお経、宇宙を震わせる
まさかの屁オチ(笑)。しかし、ちゃんと屁は、お経を音として伝え、雲を霧消させる役割を担っている(笑)。個人的に、3Dホログラムのフラッシュ経典というのが、斬新で視覚的にインパクトが強かったのが好きでした。漫画、封神演義、のパオペイが頭に浮かびました(笑)。
丁寧な感想ありがとうございました。
作者的には「“いんせきラーメン”が、ネタ的に一番ハズしてるよな~」と落ち込んでいたので、恩田さんのツボにはまったというのは、凄く意外でした。こういう作者の予期せぬ反応を頂けるから、創作は止められないな~とも思いました。未提出の誘惑に駆られたけど、提出して良かった~。
いえいえ~。やっぱり人から感想もらえると嬉しいですよね!僕も第一課題を、「こんなのつまらね~」と自分で恥ずかしがりつつ、未提出の誘惑にかられつつ、書きすすめてます(笑)。